下図に示すように,座標(x, y)の位置の点が,変換により座標(x’, y’)に移動するとする.そのとき,一般に以下の式で表される変換を,線形変換(linear transformation)とよぶ.
x' = Ax (2-9)
ここで,
(2-10)
複数の線形変換を順次施すことを考える.まず,座標xに対して,変換Aを施した結果,座標x’に移動したとすると,次式のように表される.
x' = Ax (2-11)
さらに,変換後の座標x’に対し,別の変換B(2×2の行列)を施した結果,座標x’に移ったとすれば同様に,
x'' = Bx' (2-12)
式(2-11),(2-12)より,
x”= Bx’
= B(Ax)
= (BA)x
= Cx (2-13)
但し,C=BAなる2×2の行列
以上より,任意の線形変換の組み合わせは,やはり線形変換となる.
さらに,その合成変換を表す行列は,個々の変換行列の積により求めることができることがわかる.
ただし,一般に,合成変換では,個々の変換の順番を入れ換えると,結果が異なることに注意する必要がある.
X軸の移動量をtx,y軸方向の移動量をtyとしたとき,
式(3-1)は非常に単純な式だが,式(2-1)で表される線形変換の一般形で表現することはできない.したがって,平行移動を含むような合成変換を考える時,式(2-13)では説明できない.そこで,このような問題を解決するため,次頁のような新しい座標系を導入する.
座標(x, y)に対し,その要素の数を1つ増やした座標(ξ1, ξ2, ξ3)を次のように定義する.このように定義される座標を同次座標という.
同次座標においては,λ≠0になる任意のλに対して,(ξ1, ξ2, ξ3)と (λξ1, λξ2, λξ3)は,通常の座標に直した時,ともに, (ξ1/ ξ3, ξ2/ ξ3)となるため,同じ点を表している.
つまり,同次座標による表現では,定数倍をしても変わらないとみなすことができる.このような関係を同値(equivalent)であるといい,次式で表される.
同次座標を利用すると,平行移動は次のように表現できる.
また,式(2-1)は次のように表現できる.
任意の線形変換と平行移動を組み合わせた変換をアフィン変換(affine transformation)という.一般形は次のように求められる.
アフィン変換は原図形の長さや角度は保たれないが,線分の直線性や平行性は保たれる.
任意の平行四辺形を別の任意の平行四辺形に移すような変換ともいえる.
同次座標を利用することにより,さらに一般的な変換を表現できる(射影変換).
または,
式(3-2)を用いて,式(3-8)から座標(x’, y’)を求めると以下となる.
射影変換は,線分の直線性は保たれるものの,平行性は失われる.
任意の四角形を別の任意の四角形に移すような変換ともいえる.